ひろげていこう 発達障害のWA!~「困ってる子」という視点からの支援~

アスペルガー症候群やADHD、学習障害、自閉症などの発達障害の子は、困らせる子じゃない「困ってる子」。その視点から困ってることを解決する支援のヒントや工夫を考え、もっと発達障害の子たちから見えてる世界によりそっていきましょう!

自閉症の人はとっても疲れやすいんですよ。さぼり・ズルなんかじゃないんです。

スマホを100%充電しても、充電の減り方は様々ですよね。

スマホ自体の使用頻度が高かったり、アプリを沢山入れていると充電の減りは早くなるように。

実は、自閉症の人の疲れやすさ・慢性疲労は、そんな感じなんです。

  • 偏食による栄養の偏りや睡眠障害による、そもそもの充電不足
  • コミュニケーションをとったり、姿勢を維持する事にリソース(それに必要なアプリ)を使いすぎる為に起こる消費量の過多

自閉症を含む発達障害の人は、一見障害のない人と同じように見えますが、「脳の機能障害」ゆえに体の中では障害のない人と違うシステムが作動しています。

今日は、なぜ自閉症の人は疲れやすいのか?対策はあるのか?についてちょっと書いてみたいと思います。

(このエントリでは、アスペルガーを含めた「自閉症」を主語に使っていますが、ADHDやLD等の発達障害の人にも当てはまるケースはあります。)

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自閉症の人ってどうしてこんなに疲れやすいの?

自閉症の人は、生まれながらに自閉症

自閉症の人は、生まれながらに自閉症です。

それはどういう事かというと、生まれながらに目が見えない人が「見える事」を体験からではなく、想像することでしか理解できないように、自閉症の人は「他の人とは違った脳の機能」を持って生まれたがために、「自分と自閉症じゃない人の考え方や感じ方、行動の仕方の違い」といったいわゆる「普通」が一体何なのかを知らないわけなんですよ。

でも、世の中はなかなか世知辛いもので、そんな自閉症の人に合わせてはくれません。だから自閉症の人は、他の人との違いを埋め合わせる為に努力したり、勉強したり、工夫や特別な方法を使ったりする必要があるんですよね。自閉症じゃない人が「普通にできる事」を同じようにできる為に、遠回りしたり余計な労力を使わないといけないんですよ。これが先ほどお話しした「アプリの多さ」「使用リソースの多さ」なんですよ。外見は同じように見えても体の中で起こっている事が違うんです。

では、どういった事が違うんでしょうか?自閉症の人の慢性疲労や疲れやすさの原因はいくつかあります。今日は代表的な原因である感覚の問題について簡単に説明しますね。

疲れやすさの原因の一つは、感覚の特異性の問題

自閉症の人は、他のブログ記事でも触れていますが、感覚の過敏さや鈍麻といった問題を抱えている人が多いんですよね。

例えば、聴覚が過敏な人の場合、普通の人より多くの音の情報を拾ってしまったり、視覚が過敏な人は、視野に入るすべての物に関心が向いてしまったりします。必要なものと必要でないものを分けるのが苦手な脳の為、うまく取捨選択ができないんですよね。

そうれはどういった状況かというと、例えば東京駅のホームにポツンとデスクがあるのを想像してみてください。絶え間なく人や電車が行きかい放送や電車の走行音や人の話し声に晒された状態で仕事や勉強をしているという事なんです。静かなオフィスで仕事をする同じ量がその状況下でこなせますか?疲労度の違いはどうですか?更に、上司からの指示があったりした場合に備え、自閉症の人は常に「起こるかもしれない事態」に準備をしている状態なんですよね。そうやって「指示があるかもしれない」という事態を想定して準備していないと、上司からの指示に注意を向けられないからなんです。想像するだけで疲れますよね…。 

一方、体のバランスを整えたりするために必要な前庭感覚や固有感覚に対して鈍麻な人は、ただ座っているだけで疲れます。そういう人の多くは、体幹が弱く体がいつもフラフラ・グニャグニャした状態なんですが、「じっと座る」という事はそのぐらつきを直す絶え間ない無意識の努力を体の中で必要とするんですよね。ここでも余計なリソースが必要になってきます。疲れます。

これはどういう事が体の中で起こっているかというと…

まず、安全な場所で立ってください。

そして首を前後左右に倒してみてください。

大抵の人は、そんなに体の重心の位置の変化=バランスの変化に気づかないと思います。

では次に、片足で立って同じように首を前後左右に動かしてください。 

両足で立っていた時より、立っている片足の足裏やふくらはぎなどで重心の変化を感じますよね。そして、こけないようにバランスをとろうとする為に体の色んな部分が反応せざるを得ない状態になりますよね。姿勢はグラグラなのに、筋肉が硬直してる状態です。

前庭感覚や固有感覚に対して鈍麻な自閉症の人は、立っている時はもちろん、歩いている時も座っている時も、こんなアンバランスな状態に対応し続けないといけないんです。ほんと、疲れると思います…。

 

自閉症の人の疲れやすさのほんの一例だけご紹介しましたが、学校や職場で自閉症の人が疲れやすく、休息が他の人以上に必要なことをわかっていただけましたか?決して、やりたくないからさぼろうとしたり、なまけているわけではないんですよね。

最後に、自閉症の人の疲れやすさの原因と対策を少しまとめておきますね。

自閉症の人が疲れやすくなる原因・環境

  • たくさんの人と関わる必要がある状況
  • 騒がしい環境
  • 蛍光灯のもとでの作業
  • なじみのない場所や初めてあった人と過ごすこと
  • 学校行事(全校集会・運動会など)
  • 同時に違う事をしないといけない状況・一日にあれもこれもしないといけない日
  • 寝不足な日

解決策 

  • こまめな休息・まとまった休息
  • 一人で静かに過ごせる環境(職場なら、デスクの周囲をパーテーションで仕切ったり)
  • 作業の簡素化(シングルタスク)
  • 刺激の少ない環境(音対策にイヤーマフを使ったり、蛍光灯の使用を避けたり)
  • 体幹を鍛えたり、ウォーキングや水泳など適度な運動・トランポリン
  • 十分な睡眠(少し重たいお布団を使ってみるのもいいです)
  • お風呂でリラックス好きな本を読んだり好きな音楽をきいたり
  • 周囲の人の理解 

息子はアスペルガー症候群で、感覚の過敏・鈍麻の問題を抱えています。だからとても疲れやすいんです。その為学校で疲れた時には、授業を抜けて一人静かに過ごせる空間で音楽をきいたり、本を読んだりすることが許されています。息子の学校では、先生だけじゃなくクラスメイトもこういう息子の大変さを理解してくれているんですよね。だから息子と一緒に過ごしたクラスメイト達が社会に出て仕事をする時に同じような疲労の問題を抱えた人に出会ったら、きっと彼らはすんなりその状況を受け入れ、理解を示してくれるんだろうなぁ~と思います。

自閉症などの発達障害の人の疲れやすさの問題にもやっぱり必要なのは周囲の理解なんですよね。いつもお願いばかりなんですが、この記事を読んでくださった人が「へ~自閉症の人って疲れやすいから休憩が他の人より必要だったり環境の工夫が必要だったりするんだね~」「充電がこまめに必要なんだね~」と理解してくださることを願っています。よろしくお願いします。