自閉症の人の感覚過敏による偏食とホムンクルス 自分を責めないで
自閉症の人の偏食は、好き嫌いというわがままなどの感情の次元ではなく、感覚過敏や同一性保持の特性からくる恐怖に対する防衛反応であり、安心を求めた行動なんですよね。
感覚統合療法での改善は少しはみられるものの、残念ながら明確な解決方法は見つかっていませんが、「安心」を求めた行動という観点から「無理強い」は悪循環でしか無い事をまずは知って頂けたらなって思うんですよね。
まずは、このブログの執筆のきっかけになった私のツイートをご覧ください。
これは辛いな…。「そもそも冷凍食品を与えた母親が悪い」ってさぁ、色んな物を試して失敗し続けて、やっと辿りついた生きる望みが冷凍食品だったんですよ…
— チャビ母 (@chubby_haha) 2017年4月22日
自閉症の娘が唯一口にする食品が製造中止へ 「飢え死にする」母が不安を吐露(英) https://t.co/KlOcyCC5mD
自閉症の人は感覚調整障害にも悩まされている人が多いんです。敏感過ぎる感覚が邪魔をして食べられない訳で、好き嫌いとは全く別次元の話なんですよ。そこに同一性保持という変化を恐れる特性が加わって、変化のある手作りよりも、「同じ味&質」である冷凍食品やマクドナルド等を好みやすいんですよね
— チャビ母 (@chubby_haha) 2017年4月22日
息子が幼い頃、数少ない食べられる物の一つがあるレトルト食品でした。ある時それを食べた時パニックを起こしたんです。不安に思って製造元に品番を知らせてみたら、機械でしか判別出来ない程の原材料の変更がその品番にはあると。幸い息子はこれ以外にも食べる物があっからまだ大丈夫だったんですよね
— チャビ母 (@chubby_haha) 2017年4月22日
息子の偏食を告げると「細かく刻んで好きな物に混ぜればいい」「好きな物以外を出し続けてたらそのうち食べるよ」とかってアドバイスを下さる方が多いんですが、自閉症の感覚過敏からくる偏食ってそんなレベルじゃないんですよ。だから給食とか集まりの時に別食を用意する事を理解していただけたらな…
— チャビ母 (@chubby_haha) 2017年4月22日
この記事の件とは別のケースで、製造中止を知って製造元に掛け合ってたら、企業側が理解を示して製造を細々と続けてくれた事もあった。兎に角○○しかダメっていう事情を抱えてる自閉症の親御さんは、ダメ元でも前もって伝えておいた方がいいかも。うちも歯磨き粉の件でとても親身になって貰えたから。
— チャビ母 (@chubby_haha) 2017年4月22日
息子は偏食も酷かったんですが、口の中の過敏さの影響で歯磨き粉もコレしかダメというのがあったんです。それが製造中止になった時メーカーに問い合わせて事情を話したら、卸先等をあたって下さいました。その時に海外製で似たようなタイプの物があるとヒントを下さってそれを見つけ、事なきを得ました
— チャビ母 (@chubby_haha) 2017年4月22日
口の中が異物を感じやすい理由:ホムンクルス
五感という言葉を耳にしたことがある人は多いと思いますが、人間には三種類の感覚のカテゴリーがあります。
- 触覚・固有感覚などの体性感覚
- 視覚・聴覚・嗅覚・平衡感覚などの特殊感覚
- もう一つは、内臓に由来する内臓感覚です。
体性感覚の場合、皮膚などの感覚をインプットする感覚器で得た感覚情報は一旦視床に集められ頭頂葉にある体性感覚を処理するエリアに送られます。脳のそのエリアは、体性感覚器官からインプットされる感覚情報の入力量や生きて行くために重要なものに対して多くの面積を与えています。
その「体性感覚の地図」を表してくれているのが、ホムンクルスっていう小人なんですよ。
この頭頂葉の脳の図(左図)や立体のホムンクルス(右の写真)を見てもらったらわかるように、手と唇と舌が実際の体積に比べて異常に大きいのがわかりますよね。要するに、それらからの感覚情報は生きて行く上で重要であり、できるだけ沢山の情報が得られるように人間の体はできているんですよね。感度が高いというわけなんです(センシティブ)。
例えば手のひらに砂がついていたら気になってはたきたくなりますよね。でも背中や足に同じ量の砂がついてても気にならないですよね。同じように、ほんの一粒の砂のような異物が口に入ったら、すぐに気づきますよね。魚の小骨に気づけるのも、この機能のおかげなんですよ。
では、感覚過敏によって、唇や舌の感覚が普通よりも過敏になっていたらどうでしょう?ただでさえ多くの感覚情報が唇や舌から脳に送られていくのに、まるで異物のような嫌な食感の物が口に入って来た時、吐き出したくなるはずですよね。これって恐怖ですよね。だから、感覚過敏の自閉症の人の偏食は、恐怖に対する防衛反応でもあると思うんですよね。あさりのお味噌汁に砂が混じっていたり、魚の小骨が入っていたら、次のひと口からはすごく警戒しますよね。さっきまでよりはもっと念入りに小骨の有無を調べてからじゃないと口に入れたくなくなりますよね。それと同じなんですよ。
では、怖くなって自分を守ろうとした時に必要なのは?
それは安心ですよね。偏食のある自閉症の人が同じものだけを食べ続けるのは、同一性保持=安心を求めている行動なんですよね。
でもね、中々こういうメカニズムをマニアックに知ってる人っていないのが世の常で、「我慢して食べてみようね」「好き嫌いはいけません」と責められる自閉症の人も多いと思うし、「どうして食べれるように工夫しないの?」「甘やかし」「親の責任」と責められるお母さんも多いと思うんですよね。自閉症の感覚過敏からくる偏食は、こういった二次的な被害も生み出しかねない特性なんですよね。
だからこそ、誤解を生まないためにも、自閉症の人やそのご両親が無理解の為に責められることが無い事を祈ってこの記事を書きました。
どうか自分の事を責めないでくださいね。
補足:口の中、口の周りの感覚刺激グッズ
これは、作業療法で使われている口腔内&唇&頬の感覚刺激に使われていました。
バイブレーションのスティックの先に、用途に応じたラバーを付けて使うんですが、唇や頬、口の中を刺激する事で感覚の統合を促すためのセラピーです。よだれが気になるお子さんや、食事中&食後に口の周りがすごく汚れていても気づかないお子さんにもこういう感覚刺激グッズはお勧めですよ。(注意:無理強いは絶対だめですよ!!!)