ひろげていこう 発達障害のWA!~「困ってる子」という視点からの支援~

アスペルガー症候群やADHD、学習障害、自閉症などの発達障害の子は、困らせる子じゃない「困ってる子」。その視点から困ってることを解決する支援のヒントや工夫を考え、もっと発達障害の子たちから見えてる世界によりそっていきましょう!

発達障害の子供たちとの関わりに役立つSOAPノートの考え方!

「甘えてるだけだな」「さぼってる」「努力がたりない」

発達障害の子供たちは、こういう言葉をあびせられ、その子が本当に困ってることに気づいてもらえず、「ダメな子」と判断されることが多い…というのはもう私は何度も何度も言い続けています。

これってね、いつも言うように「発達障害が見た目に困った事がわかりにくい障害」だからというのはもちろんあるんですが、注意してる人の「主観」だけで判断される場合に起こってる事なんですよね。

「私なら、何度か漢字を書きとれば覚えられる。でもこの子はできない。それはさぼっているからだ」ってね。

だからね、「発達障害の子の視点」に立たないと「困った事」は解決できないわけなんですよね。だってね、発達障害のない人の「ものさし」で考えても、発達障害の困ってる事はわかりっこないから。その「違い」があることが、発達障害なわけなんですからね。 

そこで役立つのがSOAPノートの考え方なんです。
聞いた事がない人も多いかと思うんで、今日はちょっとSOAPとは何か、それが発達障害のお子さんと関わる時にどんな風に役立つのかについて触れてみたいと思います。

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SOAPノートって?

SOAPノートは、作業療法士(OT)や理学療法士(PT)が、患者さんと関わる時に使う事が多いんですよ。病院やセラピーのカルテなんかもこのSOAP形式で書くことが多いんです。

SOAPは、
Subjective(サブジェクティブ)
Objective(オブジェクティブ)
Assessment(アセスメント)
Plan(プラン)
の頭文字からきています。

  • S:主観的な情報:お子さんの発言だったり、家族の人の発言だったりです。
  • O:客観的な情報:お子さんを観察する事によって得られるデータです。年齢や診断名、あとわかっていればお子さんの発達段階なんかも大切な情報です。
  • A:SとOで得た情報に基づいて、実際に関わりを持ってみること(何かを試してみること)です。その関わりで得た進捗状況やどれだけの支援が必要だったなど、どう改善したか・しなかったか等の情報も大切なデータです。ここで大切なのが、「お子さんの視点」に立って「困ってる事」を分析する事なんですよね。
  • P:Aの関わりで得た結果をもとに、次のステップへのプランを立てることです。「いつ、どんな方法で、それだけの支援で・・・」と具体的かつ簡潔に計画を立てます。

発達障害の子の「困ってる」をSOAP形式で考えてみましょう

例をあげます。

学校の国語の授業中、太郎君は「もうこれ以上書けないよー!」と鉛筆を放り投げました。

これをSOAP形式で関わってみます。

:「もうこれ以上書けないよー!」

:太郎君はアスペルガー症候群と診断されている9歳の男の子です。給食前の4時限目の国語の時間の漢字の書き取り練習中にかんしゃくを起こし鉛筆を放り投げました。
少し疲れている感じで姿勢は机に前のめりで崩れています。鉛筆を硬く握り、筆圧の濃い字を書いています。少しマスからはみ出しただけでもそれが許せず消しゴムで何度も消そうとしますが、消したい場所以外も消えてしまったり、字が濃いせいもあってなかなか完璧に消せないのでイライラがつのっています。一文字書き終わった時に鉛筆を手から放して手をブラブラ振り休めています。

:まず壁に向かって腕立て伏せを5回するよう指示し、席に戻るように促しました。ノートの下にバインダーを置き傾斜をつけて、マス目の大きいノートに替え、蛍光ペンで手本を先に書き太郎君がなぞればいいようにし、マスの周りをWikki sticks(下記参照ください)で囲んでみました。

姿勢がよくなり、手首にかかる負担が少なくなったようで、手を休めるまで5文字連続書けるようになりました。筆圧も固有感覚へのアプローチにより若干薄くなり、鉛筆を握りしめる力も少なくて済んでいます。蛍光ペンの手本をなぞることにより、頭の左右の動きが減ることによって書いているマス目を見失う事が減りました。Wikki sticksによりはみ出しがなくなり、書き直し&消しゴムを使う場面が見られなくなりストレスが減っているのがわかります。

:次の国語の授業前に、壁を使った腕立て伏せを5回実行。引き続き傾斜用にバインダーを使い、蛍光ペンでの手本書きを二画目までに減らし、Wikki sticksはマス目の右側と底だけに変更。この状態でストレスなく7文字休みなく書けるようにする。 

といった感じで、お子さんの「困った事」に向き合います。

日常生活の中でSOAPを取り入れる大切さ

日々の生活の中で親御さんや学校の先生がこんな風に事あるごとにいちいちメモに書くのは難しいと思いますが、親御さんの場合、日々つけているお子さんの成長日記をSOAP形式にしたり、先生方が使う保護者の方との連絡帳をSOAP形式 で書くだけでもお子さんとの関わりが変わってくるんじゃないかなって思います。

きっとね、Aの部分は難しいと思うんですが、大切なのはSの「もうこれ以上書けないよー!」という太郎君の発言を受けて、親御さんや先生方が主観的に「やる気が無いに違いない」「わがまま言い出したな」とお子さんの行動を判断するんじゃなく、そこから「観察」することなんですよね。その時に「良い・悪い」のジャッジを下さないのがポイントです。そして可能ならAの「お子さんの視点に立って方法を考える」をやってみればいいと思うんですよね。

でも実はね、SOAPを実行してる親御さんって多いんですよ。

例えば、朝の登校がいつも予定より遅くなり「あ~また今日も間に合わないよ~」(S)という事が続いていたら、まず観察して情報収集して(O)、カウントダウンタイマーや可視化されたスケジュールを使ってる(A)といったようなご家庭は多いかと思います。この場合Pは、「声掛けを明日は3回にしてみよう」とかね。こんな風にきっと親御さんや先生の中には無意識にSOAPを実行されてる方も多いと思うんです。

でもこれからはSOAPを「意識して」やってみると、結構日常のちょっとしたことで解決策が見つかったりしやすくなりますよ。 

まずはSOAPを意識して
「あ~この子は根気がない」
「発達障害だから無理か・・・」
っていう、主観的な判断を下すことから脱してみてくださいね。

おまけ:Wikki sticksで書字や塗り絵のストレス軽減&指先動作UP

記事中でお話ししたWikki sticks。 

おもちゃ Wikki Stix -Set of 600 Classroom Use [並行輸入品]

おもちゃ Wikki Stix -Set of 600 Classroom Use [並行輸入品]

 

これは、形を自在に変えられ、ノートや机などにもくっつけられはがすのも簡単なスティックです。塗り絵の時に周りをこのスティックで囲ってあげたり、字を書くときにマス目やノートの罫線にそって張り付けて境界を手の感触で感じられるようにしてあげることで、書字や塗り絵などの手首・手・指先のコントロールを促してあげたり、はみ出すことへのストレスを減らしてあげたりする時によく学校やセラピーで使っています。上のアマゾンの商品紹介の写真で他の使い方も紹介されてます。結構色んな事に使え楽しめますよ~!

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(sugaraunts.comさんから画像お借りしました)