知ってください!自閉症の人の不思議な感覚の世界【感覚の過敏・鈍麻】
自閉症ときけば、
- 対人・社会性
- コミュニケーション
- 想像力・こだわり
このいわゆる三つ組みの障害・困難を思いうかべる人は多いと思います。
でも自閉症の人の多くは、他の人とは違う【特異な感覚】を持っていて、それが日常の生活に支障をきたすことは珍しくないんですよね。
どう特異かというと、他の人以上にその感覚を感じすぎたり(過敏)、他の人が感じる感覚を同じように得られなかったり(鈍感)するわけです。
例えば、音への過敏さを持っている人は、ちょっとした教室なんかのざわざわなんかも、極端にいうと、大音響のライブハウスにいるような感じに受け取ってたりするわけです。
そんな状況、「その場」だけじゃないんですよ。毎日24時間365日四六時中です。
疲れますよね。耳をふさぎたくなりますよね。その場から逃げ出したくなりますよね。
でも、自閉症の人たちのそういった【特異な感覚】の世界を知らない人は、そんな事がその人の中で起こっていることに気づかないから
「我慢しなさい」「ふざけるな」「ちゃんとしなさい」「わがまま言うんじゃありません」なんて言ってしまうんですよね。
それはある意味仕方ないのかもしれません。だってその「困らせる行動」の原因を知らないわけですからね。
でもね、自閉症の人たちは「困ってる」んです。
そこをたくさんの人に知ってもらえたら、「我慢しなさい」なんていう人も減って、「困ってる」ことの解決策を考えてくれるんじゃないかな?
そういう思いを込めて、今日は自閉症の人の感覚の世界について、4年前のツイートをもとに最低限知って貰いたいことを書きたいと思います。
自閉症の人の特異な感覚の世界
感覚って何?私達はどんな風に感じてるの?
感覚には、いわゆる五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の他に、筋肉や関節からの感覚を感じる固有受容覚や、重力や平衡感覚を感じる前庭感覚などがあります。これらの感覚が、自閉症の子達が過剰に反応したり、反応を示さなかったりする代表的な感覚です。
私達は各感覚を一つずつ感じているのではなく、複数の感覚を同時に感じます。例えばシャツを着る時なんかは、シャツの肌触り、におい、その時の周囲の音、目で見ている情報…を同時に得ていますよね。
それらの感覚は、体のなかでどんなふうに処理されるかというと
- 全身から感じた感覚の情報を (外の世界からの感覚情報のIN)
- その場の環境に適切に反応を起こせる為に脳の中で調節し (各感覚器官から届いた情報を脳に送るIN)
- それらをまとめ (動作=OUTをするための処理)
- どのような体の動きをすればいいのか司令を出します (運動・動作としてのOUT)。
自閉症の子達は、この感覚処理の過程になんらかの障害があるとされています。感覚の情報をキャッチするのがうまくできなかったり(IN)、感じた各感覚をうまく脳の中で調整しまとめられなかったり(IN)、まとめた情報から適切な運動や行動を促せなかったり(OUT)しています。
感覚の処理がうまくできてないとどんな事が大変になるの?
こういった感覚の処理の障害によって起こる困難は、大きく2つに分類できます。
- 一つは感覚の過敏(触られるのが嫌、長袖シャツが着られない、大きい音が怖い、高いところに上るのや手を頭より高い位置に伸ばすのが怖り、等)や低反応(話しかけられても気づかない)といった、感覚に対する反応が特異であることによって起きる、行動の問題です。(イライラ・パニック・耳ふさぎ・その場から逃げ出す、等)
- もう一つは、筋肉やバランスなどの情報の処理がうまくできないことによって起こる、運動の問題です。例えば、イスに座っているとすぐに姿勢が崩れる子や、ロボットのような体の使い方をする子、手先が極端に不器用で乱雑な字を書いたりする子達は、感覚の処理の問題によって運動に影響が及んでいます。
これらからわかるように、
- ざわざわした全校集会に参加できなかったり
- 正しい姿勢で勉強できなかったり
- すぐにぐだ~っと寝転んだり
- うるさい音にギャーッとパニックになったり
- 枠内に字が書けなかったり
- みなと同じ制服や体操服がきれなかったり
- 他の子と同じようにすべり台やジャングルジムに登れなかったり
- 本棚の高いところに置かれてる本に手を伸ばせなかったり
- みんなと同じように給食が食べられなかったり…。
これらは一見わがままな行動に見えますが、自閉症の人には自分でコントロールしきれない困難なんですよね。
感覚の過敏/鈍感ってどういうこと?
ではなぜ、感覚の過敏/鈍感が起こってるのかというと、感覚の処理の過程で、感覚の受け止め方が違うからなんです。例えば痛さを感じるセンサーの値を10とし、標準を5とします。
- 痛さが5以上の8とか9にならないと感じない子が鈍感といわれ(Hyposensitivity)
- 5以下の2とか3で感じちゃう子が過敏なわけです(Hypersensitivity)
感覚に対して鈍感だとどんなことが起こっちゃうの?
ある感覚の刺激に鈍感な子(センサーの値が高い子)というのは、例えば私達がCDのボリュームを自分が聞こえるまでドンドンあげちゃう感じと同じで、自分がその刺激を感じられるまでその刺激をドンドン求め続けます。
コマのようにクルクル回ったりする子は、バランス感覚をキャッチする前庭感覚が感覚情報を欲してる状態なんです。私達の多くは、一回まわると目が回りますよね。前庭感覚が鈍感な子たちは、でもぐるぐるぐるぐる回って刺激をどんどんいれていって初めてセンサーが「回ってるね」と気づいてくれるんです。
字を書くときに鉛筆をぎゅっと握って濃い字を書く子も、手のひらの触覚や、指・手首・肘・肩の関節や周辺の筋肉から適切に情報を得られていないために(固有感覚の鈍麻)そうなってしまうんですよね。
また、ある感覚に鈍感な子は、一般的な範囲の刺激ではその刺激に気づくことができないので、普通なら痛がるような怪我にも無反応だったり、話しかけられたことに気づけなかったり、高熱があっても走り回ったりします。こういう子達には、大人は特に注意が必要なんですよね。
感覚に対して過敏だと、どんなことが起こっちゃうの?
一方、ある感覚に敏感に反応する子達(センサーの値が低い子)は、例えば私達が心地いいと思うCDのボリュームが耐えがたく、ボリュームを下げる為の行動を起こします。ざわざわした集会場に入れなかったり、その耐え難い刺激のせいでかんしゃくをおこしたりします。
小さいお子さんが、ある種(ある素材)の服だけを着たがらなかったり、長袖・長ズボンを極端に嫌がったり、帽子をかぶるのを嫌がったりする場合は、触覚の過敏を疑った方がいいと思います。
偏食なんかもそうですし、歯医者さんで口が開けられないもの口腔内の過敏のせいかもしれません。
公園などで他の子と同じようにすべり台やジャングルジムに登れなかったり、ブランコを怖がったり、本棚の高いところに置かれてる本に手を伸ばせなかったり、そういう場合は固有感覚や前庭感覚が過敏な事が多く、「怖くないよ」「頑張ってやってみよう」と無理強いするのは逆効果でしかありません。
感覚の過敏な子はすべてにおいて過敏なの?鈍感な場合もそう?
同じ子でも各感覚によって刺激への反応の値は違います。
触覚過敏のある子が、聴覚にも嗅覚にも過敏だというわけではありません。
匂いに過敏に反応する子が大きい音が平気だったり、また、聴覚の過敏さを持つ子でも、ある音は平気で、ある種の音だけが耐え難かったり。触覚過敏がある子は、肌の表面をサラッと触られるのを針で刺されるように感じることもあれば、ぎゅっと腕をつかまれるのは平気だったりします。
自閉症の特異な感覚の世界 まとめ
自閉症の子たちの不思議・不可解な行動が、感覚の感じ方の違いで起きているっていうこと、お分かりいただけましたか?
「我慢しなさい」「ふざけるな」「ちゃんとしなさい」「わがまま言うんじゃありません」という言葉が、適切な行動を促す言葉ではなく、感覚の問題を持つ人たちを更に追い込んでしまっている言葉だということを少しでも多くの方に知って貰えたらなって思います。
そして、「感覚の世界」をその人の内側から見ることで、その人に必要な解決方法や対処の仕方を探してあげてほしいなと思います。
人は一人ひとり違います。感覚の受け止め方だって違います。
今日は自閉症の人について書きましたが、これらの事は、自閉症のそれとは別に「感覚処理障害」「感覚統合障害」とも言われ、自閉症以外の人にも起こりうることでもあることを最後に付け加えておきます。
では、長くなったのでこの辺で終わります。
また追々、各感覚についてもっと深く迫ってみたいと思います。そして対処法、家庭でもできる感覚統合のことなんかもシリーズ的に語っていけたらなって思ってます。
ここまで読んでくださったかた、どうもありがとうございました。